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정책칼럼

유럽의 정치 안정은 지속되는가 - 우려되는 이민·난민문제의 재연 (23-5-17)/ 川畑大地 外.Mizuho Research & Technologies연구소

欧州政治の安定は続くか ~懸念される移民・難民問題の再燃~

 

ギリシャの5月総選挙は再選挙にもつれこむ公算大

5月21日(日)に行われるギリシャの議会選挙まで一週間を切った。直近の世論調査では、ミツォタキス首相率いる中道右派の新民主主義(ND)が35%前後の支持を集めてリードを保っており、第一党となる可能性が高い。それを最大野党で左派ポピュリスト政党の急進左派連合(シリザ)が30%程度、中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が10%程度の支持率で追う展開になっている(図表1)。

ただし、NDによる単独過半数獲得は極めて難しい情勢だ。ギリシャでは2020年の選挙法改正で、最多票を獲得した政党に議席を上乗せするボーナス議席制度を再導入したが、即時効力発生に必要な3分の2以上の賛成票を得られなかったため、同制度が適用されるのは次々回の選挙からとなる。世論調査を踏まえれば、NDが議会第一党になる公算が大きいものの、ボーナス議席が割り振られない今回の選挙では、単独過半数獲得は難しいだろう。さらに、NDが有力な連立相手とされるPASOKと手を組んだとしても、過半数に届かない可能性がある。どの政党・勢力も過半数議席を獲得できず政権樹立が難航した場合、遅くとも7月までに再選挙が行われるとみられる。前述の通り、次々回選挙からボーナス議席制度が適用されるため、再選挙では第一党になることが予想されるNDにボーナス議席が付与され、それでも過半数に届かなければPASOKとの連立政権の可能性が高まる1 。もっともNDが4月に公表した公約は、経済成長やデジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)、財政健全化等を進める内容であり、過度なバラマキや過激な移民排斥等、欧州連合(EU)との深刻な対立が予想される政策はみられないことから、選挙結果を受けて為替や国債市場が動揺することはないだろう(図表2)。かつて財政政策等を巡ってEUや欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)と衝突したツィプラス氏率いるシリザは世論調査で2位につけているが、政権奪還の可能性は低く、その点は市場にとって安心材料と言える2。

 

昨今の欧州政治にみられる二つの傾向

昨年来、欧州各国で選挙が行われているが、その結果から大きく二つの傾向が見て取れる。まず挙げられるのが、右派が政権を取ったり躍進したりするケースが増えている点だ。昨年4月のフランス大統領選挙では、決選投票に進んだ右派ポピュリスト政党である国民連合のルペン氏が、同じく決選投票に進んだ2017年大統領選挙と比較して得票率を上げ(2017年:33.9%→2022年:41.5%)、その後に行われた同国議会選挙でも、国民連合は前回(2017年)の8議席から89議席に獲得議席数を伸ばし、大躍進を遂げた。また、9月のスウェーデン議会選挙では、第二党に躍進した極右のスウェーデン民主党を含む右派連合が勝利を収め、右派連立政権が成立した3。加えて、同じく9月にイタリアで行われた議会選挙では、右派ポピュリスト政党のイタリアの同胞(FdI)を中心とする右派連合が勝利し、FdI党首のメローニ氏が首相に就任した。FdIは政権樹立後も、地方選挙で勝利を収めるなど、高い支持率を維持している。このほか、今年4月のフィンランド議会選挙では、中道右派の国民連合が第一党になった一方、政権与党で中道左派の社会民主党は第三党に転落した。今般のギリシャ議会選挙でも、スキャンダル等4で政権に逆風が吹いているものの、NDは底堅い支持を得ている。

このように、欧州各国政治は右傾化の様相を呈しているが、その要因の一つとしてコロナ禍やウクライナ侵攻により先行き不透明な状況が続く中、変革を訴える左派よりも、保守的な右派が支持を集めている可能性が指摘されている5。また、ウクライナ侵攻を契機に国防への意識が高まっていることも、右派の支持拡大につながっている可能性がある。

もう一つの傾向は、右派ポピュリスト政党の穏健化だ。EU離脱や過激な移民政策を前面に打ち出してEUとの対決姿勢を示していた政党が、従来の極端な主張を控える傾向にある。フランスのルペン氏は、もともと移民やイスラム教徒への強硬姿勢をとっていたが、昨年の選挙戦ではこうしたトーンを抑制して穏健化路線を打ち出し、インフレ対策などを重点的に訴えたほか、前回の大統領選で主張していたEUやユーロからの離脱も封印した。イタリアで第一党に躍進したFdIはムッソリーニが率いたファシスト党の流れをくむ極右ポピュリスト政党であり、党首のメローニ氏はかつてムッソリーニを称賛する発言をしていたが、選挙戦ではルペン氏と同様に穏健路線をとり、EUや西側諸国との協調を訴え、選挙後もEUとの過度な対立は回避している。このほか、スウェーデン民主党党首のオーケソン氏も、移民制限の立場は維持しつつ、以前のようなEU離脱や人種差別的発言は封印した。

ポピュリズムは「善良な人民」と「腐敗したエリート」という対立軸に基づき、「われわれ」と「彼ら」という二元論を構築する。右派ポピュリズムはこの二元論がナショナリズムに基礎づけられるため、「内なる他者」である移民や、「われわれ」としての「国家」の外から権力を及ぼすEUが否定の対象となりやすい(稗田(2019))。こうしたイデオロギーを背景に、右派ポピュリスト政党は移民排斥やEUからの離脱といった主張を繰り返すことで、これまで支持を集めてきた。しかしながら、足元では最大の受益国であるイタリアを中心にEU復興基金の恩恵を受ける国も多くなっていることなどから、EUへの信頼感が高まっている(図表3)。また、インフレによる生活費高騰が人々にとって喫緊の課題となり、移民問題への関心が薄れている。世論調査によれば、2015年の欧州難民危機を受けて、「移民」は2015年から2019年まで5年連続でEUが直面する最重要課題とされていた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年は最重要課題がインフレ、第2位が国際情勢、第3位がエネルギー供給となっている(図表4)。こうした世論の変化を受けて、各国の右派ポピュリスト政党はEU離脱や過激な移民排斥政策のような極端な主張を控えて6穏健化するとともに、インフレ対策等のより現実的な政策を掲げて支持を伸ばしているとみられる。

 

移民・難民の増加が先行きの政治不安リスクに

このように、昨今の欧州政治には右傾化と右派ポピュリスト政党の穏健化という二つの傾向がみてとれる。特に右派ポピュリスト政党の穏健化は、政治不安による為替や国債市場の混乱が生じにくくなるという意味では安心材料だ。ただし、こうした政党が再び過激化することで政治不安が再燃し、経済や市場に悪影響を与えるリスクには注意する必要がある。とりわけ、中央地中海ルート7の不法移民が急増していることは気がかりだ。2023年1~4月の中央地中海ルート不法移民は、約4万2千人と前年同期から3万人以上増加している(図表5)。このペースで流入が続けば、2023年の同ルート不法移民は前年から9万5千人程度増加し、欧州難民危機直前の2014年以来の増加数となる。こうした状況を受けて、イタリアは4月に6カ月間の非常事態宣言を出し、取り締まりを強化する方針を示した。

 

不法移民急増の背景には、ロシアによるウクライナ侵攻がある。田村(2022)は、アフリカ諸国は穀物自給率が低く、かつ穀物輸入の大部分をロシアやウクライナに依存していることを指摘しているが、ウクライナ危機により両国産の安価な穀物輸入が減り、激しいインフレによる生活苦が続いていることが、欧州への移民増加につながっているとみられる。また、今年2月にチュニジアのサイード大統領がサブサハラ(サハラ砂漠以南)から同国への移民に対する差別的な声明を出し、取り締まりを強化する方針を示したが、これにより、サブサハラ等からチュニジアに流入していた移民が地中海経由で欧州へ渡っている可能性がある。加えて、政府軍と純軍事組織の戦闘が続くスーダンから欧州への難民が増加する恐れがあるほか、スーダンから近隣の北アフリカ諸国への難民が増加することで、元々こうした国々で働いていた低賃金労働者が職を失い、欧州に職を求めて流入する懸念もある。

欧州各国は今後高齢化により労働力人口の減少が見込まれるため、移民受け入れによる労働力の補填は不可欠だ。しかしながら、移民・難民の急増は、治安悪化や失業等への懸念を増幅させるとともに、これに呼応する形で右派ポピュリスト政党が再び過激化するきっかけとなり得る。移民・難民受け入れを巡ってEUと各加盟国、あるいは加盟国同士での摩擦が強まると、多くの国で今は下火になっているEU離脱論が再燃するリスクがある。先行きインフレ率が鈍化していく中で、人々の関心が再び移民・難民問題に戻る可能性は否定できない。今年予定されているスペイン議会選挙や来年に控えた欧州議会選挙を展望する上でも、移民・難民や各国の右派ポピュリスト政党の動向には注意を払っておく必要があろう。

 

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