本稿では、ロシアへの金融制裁を受けて注目を浴びている人民元決済システム CIPS の
概要と今後の展開を見定める上でのポイントを整理した。
CIPS は決済通貨が主に人民元であることや、送金情報の伝達手段において SWIFT に依
存している部分が少なくないことから、短期的に見ると CIPS が SWIFT を代替できる範
囲は限定的である。
長期的な視点から見ると、CIPS が SWIFT の代替手段として普及するには、ネットワー
ク拡大と取り扱い通貨である人民元の国際決済での利用増加の 2 点が重要となる。
対ロシア金融制裁を受けて、万が一の代替ルートとして CIPS に参加する機関は増加す
るとみているが、実際に利用が進むか否かは人民元の利用動向次第となろう。今後も資
本取引規制の壁が残る限り、人民元が広く普及することは困難であると推測される。
ただし、足元で米ドル決済を制限されたロシアによる人民元の利用が急増している。こ
うした動きが将来的な金融制裁を憂慮する他国にまで広がっていくのか、今後の CIPS
の展開を見定める上で、引き続き注視していく必要があるだろう。